同色
赤色の彼は、とても陽気な性格だった。
誰かが落ち込んでいても、彼がいるだけでその場が明るくなった。
会社の犬が現れるまでは…そうだった。
犬は初めは白色だった気がする。それが赤色になり、徐々に色が濃くなって今は真っ黒だ。
一人、また一人と犬は狂ったように吠え、噛み付いた。
そして噛んだ者達を、何色にも変わらぬようにと黒く染め上げていった。
赤色の彼は激しく抵抗したが、犬は鋭い牙で噛み付いて首を振ると、赤色の彼は為す術なく黒色に染まった。
皆が黒く染められ、何者でも無くなっていった。
残った他の色の者は、行き先の見えない広い海に投げ出された。
とても小さな船に乗り、真っ黒い荒波に揉まれながらも転覆しまいと必死にしがみついていた。
闇の中で犬が吠続けると、船は大きく揺れた。
良く見ると真っ黒い手が船を掴んで揺らしている。
私はその手を掴んで振り払おうとすると、今では真っ黒く染まった赤色の彼が、顔を出して私に言った。
私はこれでいいのかと、
その瞬間、
我に返って私は吠えた。
吠えて吠えて吠えまくった。
その声が誰に届くだろうか?
真っ暗な闇の中で真っ黒い犬が叫んだところで見つかるわけもなく、探してもくれず、
それでも、ひたすら吠えた。
すると、何色にも染まっていない者達が、私を見つけ近づいてきて、私の首輪を外してくれた。
私は闇の中を駆け抜けて、真っ黒い飼い主に飛びつき、噛み付いた。
真っ黒い飼い主は観念して、檻に入った全ての犬を解放した。
私のせいで真っ黒になった者達は、何故か黒色のままだったが、私は白色に戻っていた。
色が戻らない者達の事で、私は戸惑っていた。そこに、何色にも染まっていない者達がやって来て、私を赤色に染めた。
皆がより一層鮮やかに染めてくれた。
そして私は答えた
これでいい